Netflixドラマ「梨泰院クラス」感想ネタバレあり 中毒的な面白さのワケ 

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今、韓国ドラマの「梨泰院クラス」が爆発的な人気を誇っています。
新型コロナによるステイホーム期間で、映画やドラマをネットで見る人が増え、6月末の時点でもNetflixの国内ランキングでは常に2位か3位を保つほど息の長い人気作です。

僕もステイホーム期間に友人から勧められ、普段韓国ドラマはあまり見ないので半信半疑で見始めたところ、どっぷりと本作の面白さにハマってしまいました。

1話あたり1時間半近くあり、全16話もあるので、長いドラマに見慣れてない方は最初しんどいかもしれませんが、その長さを感じさせないほどのめり込んでいけると思います。

ではなぜ、この「梨泰院クラス」が多くの人を惹き付けるのか、その魅力を分析してみたいと思います。

あらすじ

新しい高校に転校した青年パク・セロイは、韓国の大企業・長家の長男グンウォンと揉め事を起こしてしまう。長家の会長でありグンウォンの父であるチャン・デヒから謝罪を求められ、信念に基づき謝罪を拒否したセロイは高校を退学させられてしまう。
その後父親まで奪われ、刑務所に入れられたセロイは長家への復讐を誓い、韓国トップの企業を目指して韓国の梨泰院に居酒屋を開店させる。

以下、ネタバレ含みます

(1)痛快な復讐劇

本作の物語は主人公パク・セロイが長家(チャンガ)という韓国最大の大手飲食企業に復讐を果たすというのがベースになっています。
セロイは高校生の時、長家の会長であるチャン・デヒの息子であるグンウォンに暴力を振るってしまいます。その事件のせいで退学となってしまったセロイですが、不運は続きグンウォンの事故でセロイの父親が亡くなってしまいます。チャン親子はこの交通事故を揉み消し、別の容疑者を立て事件を終わらせようとしましたが、セロイはこの事件の真相に気づきチャン親子に復讐を誓うのです。

セロイは復讐の第一歩として、長家の本社がある梨泰院という韓国の大都市に、自ら小さな居酒屋「タンバム」をオープンさせます。タンバムをオープンした直後からお店での未成年飲酒が発覚したり、長家にタンバムがあるビルの所有権を奪われたりと大企業が小さな居酒屋にそこまでするか?というくらいしつこく邪魔をしてセロイを追い込みます。
その度にセロイ率いるタンバムチームはアイデアを駆使して危機を1つずつ乗り越えていきます。
この「追い込まれても別のアイデアで危機を脱する」様が見ていてとても気持ち良いのです。

セロイは「暴力による解決」ではなく、「飲食業界トップである長家をビジネスによって潰す」ことで亡き父親への復讐を果たそうとします。
タンバム経営の危機を確実に乗り越え、徐々に長家を脅かしていく企業にまで成長していきます。宿敵のチャン・デヒを逆に追い詰めていくこの復讐劇が、たまらなく痛快なのです。屈辱的な表情に溺れていくチャン・デヒの描写のカタルシスは絶大です。


全編に渡り、セロイと長家の対立が描かれていきますが、セロイの根底にある想いは、父親に対する尊敬の念です。親子の普遍的な愛が原動力となっているので、セロイが復讐をする理由や、なぜそこまでして頑張るのかということが説得力を持って見ることができます。

韓国の復讐劇をテーマにした映画はよくありますが、暴力での陰鬱な復讐が多く、ビジネスで真っ向から復讐を果たすという点が、作品全体をダークなトーンにしすぎず、軽い気持ちで見ることができます。この復讐劇中に潜む軽妙さが、幅広い世代から人気を得た理由ではないでしょうか。

(2)登場人物の程よい恋愛関係と自立した女性像

「梨泰院クラス」には恋愛ドラマの要素も大きくあります。セロイを巡って二人の女性が登場します。セロイが好意を寄せながらも決して付き合う事のないスアと、タンバムで働く同僚でありながらセロイのことを想うイソです。

男性なら必ずスア派か、イソ派で必ず語り合うはずです。それほどこの二人のヒロインの人気も高く、魅力的です。また、見た目もキャラクターもタイプが対照的なため、意見も割れます。
女性を追いたいタイプなら「スア派」で、女性に追いかけられたいタイプなら「イソ派」になるのかもしれません。


復讐劇が根底の軸にある物語なので、コッテコテのむず痒くなるような恋愛が描かれるわけではなく、実に爽やかにこの三者が、絶妙な距離感を持って三角関係を続けていきます。見ている側は一体セロイはどちらと最後にくっつくの!?とドキドキさせられます。
女性ファンだけでなく男性ファンが入り込みやすい要素として、大人なラブストーリーも大きく影響してそうです。

そして何より、二人のヒロインのキャラクター性が今の時代の感覚を鋭く捉えています。
スアはチャンガで働くエリートで若くしてプロジェクトのリーダーを任せられるほど優秀な社員です。一方、イソはIQ162の頭脳の持ち主で、タンバムの経営の中心に立ち、タンバムを大きくしていきます。
スアもイソも、旧来よく物語で描かれてきた男性に依存してしまう女性像とはかけ離れ、仕事面でも自立した存在です。身も蓋もないことを言ってしまえば、セロイがいなくても二人にとって、何ら問題はないのです。

「梨泰院クラス」に出てくる主要な女性キャラクターたちは皆、自立した強い女性であると言えます。

(3)ビジネスエンタテインメントとしての側面

これまで復讐劇と、恋愛の要素を上げてきましたが、本作が最も中毒的にハマってしまう理由として、この「ビジネスエンタテインメント」としての側面が大きいです。


イソやタンバムの仲間たちと力を合わせながら、急成長を遂げるタンバム。梨泰院にある一つの居酒屋でしかなかったタンバムですが、売り上げを伸ばし、知名度を上げ、店舗数を拡大していきます。さらに、投資家に将来性を見込まれ、株式会社ICとして企業を立ち上げていきます。

さながら池井戸潤作品やハリウッドの起業成功映画のような雰囲気が漂い、大人の男性がハマっていく大きな要素です。

セロイたちの「長家を潰す」という目標は夢物語では決してなく、飲食業界トップの企業を超える様々な工夫と戦略に満ちています。イソやセロイの仲間の力もあり、一大企業へと成長していく様子は、ビジネス書の成功体験を読んでいるような心地よさがあります。

さらに長家の中でも、会長の後継選びにグンウォン、弟のグンスや長家専務のミンジョンの思惑が重なり合い、ドロドロの後継争いをしていく様子も描かれていきます。
そこで見えてくるのは「リーダーの資質とは何か」。人を惹きつけるリーダーとは?大企業のトップに立つリーダーとは?
セロイを見ているとこんな人物が一大企業を成長させていく若きカリスマ的なリーダーなのかと、深く納得してしまいます。
セロイの信念はいつでもブレることなく真っ直ぐです。その真っ直ぐな気持ちにイソを始めとした周りの仲間たちが突き動かされていきます。

(4)努力・友情・勝利の王道で分かりやすいストーリー

なぜ自粛期間中に多くの人に見られ、人気作となったのか?
これは単なる作品の面白さだけではなく、「物語の分かりやすさ」が理由として挙げられると思います。

序盤は特に、ご都合主義な展開が多く、ツッコミどころが多いのも確かです。
登場人物同士が偶然会う展開はしょっちゅうで、「あ、この後こうなるな」と予測できたかと思えば、完全に予測通りの展開に進んだりします。

このような深く考えず、ある程度先が読める構成になっているからこそ、自粛期間中にヒットしたのだと思います。
不安が多く自粛ストレスもある時に、誰だって暗い難解なドラマなど見たくありませんよね(笑)

セロイは長家を超すために努力し、仲間を集めて、最終的にはセロイなりのやり方で長家に勝利します。この王道のストーリー展開は、正に少年ジャンプの王道ストーリーと同じものがあります。
セロイの信念に動かされ、仲間となって、巨大な船になっていく様子はジャンプのワンピースやドランゴンボールなどの王道ストーリーを想起させます。

この見やすさ、分かりやすさが幅広い世代に受け入れられ、そして2020年のこの時期にヒットした理由と言えるかもしれません。

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