映画「オールド」 ネタバレあらすじ感想 物理を無視した老いることへの恐怖とは

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なんだか最近は映画も豊作で観たい映画がたくさんありますよね。そして最近週末に映画館に行くと思うのですが、コロナ感染者の急増でみんな遊びにいけないせいか、お客さんがかなり増えている印象があります。

大作の人気作品は当日席だと、どこも埋まっていて満席状態がここ1か月くらい続いている気がします。映画館は喋ることはないし感染対策もしっかりされているので遊びに行きやすいのでしょうか。

さて、今回は待望のM・ナイト・シャマラン監督最新作「オールド」を観てきたので、早速ですが感想を書いていきたいと思います!

あらすじ

休暇で人里離れた美しいビーチを訪れた複数の家族。楽しいバカンスを過ごしていた矢先、突如として幼い子供が青年へと成長を遂げていた。6歳だったトレントは数時間で青年になってしまったのだ。このビーチは何かがおかしい。やがて彼らはビーチの何らかの力で自らが急速に年老いていることに気付く。人々は危険を感じ、すぐビーチを離れようとするが、意識を失い脱出できない。海や崖を使って脱出を試みるも全て上手くいかない。一体このビーチでは何が起こっているのか……。

以下、ネタバレ含みます

(1)1秒も目が離せないスリラー映画

割と何も考えずにふらっと「オールド」を観に行ってしまいましたが、108分間ずっとドキドキしっぱなしの思ってた以上にガッツリとスリラー系の映画で、観た後はちょっと疲れを感じました(笑)
これから観にいく方はスリラー系だということをちゃんと意識して観に行った方が心臓に良いです。

冒頭、ストーリーの軸となるキャパ一家は離婚前の最後の家族旅行をしに、リゾートホテルへと向かいます。ホテルに着くなりリゾートらしくウェルカムドリンクが出て、親切なスタッフに出迎えられますが、もうこの冒頭からなんだか恐ろしい雰囲気が満載で進んでいきます。

それは何も起こっていないホテルのシーンでさえも不気味な音楽が終始なっていて、その後巻き起こる恐ろしい出来事への導入となっています。
この冒頭のホテルのシーンも、しっかりとラストに向けての伏線てんこ盛りになっているので最初からしっかりと観ていた方が良いです。

本作の95%舞台となるビーチに着くと、体格の良い中東系の男が一人で佇んでいます。鼻から血を流しジッと家族の方を睨む感じが怪しさマックスです。この怪しげな男もサスペンスの仕掛けの一つでした。
中盤あっさりと殺されてしまうあたりが本作のツッコミどころの一つです(笑)

家族がビーチでバカンスを楽しんでいると、息子のトレントが女性の遺体を見つけてしまい、物語の展開は一気に変化します。死体の処理をしようとホテルと連絡を取ろうとするも電波が繋がらず、焦りながらも解決策が何も見出せないまま刻々と時間が過ぎていきます。

この最初の「時間経過」が大きなポイントでした。気づいた時には息子のトレントと娘のマドックスが少年少女から青年と女性に変化しており、母親のプリスカですら誰か分からないほど数時間で急成長してしまったのです。

その後も急速な「老い」による疑心暗鬼でビーチ内での殺人、脅迫、そしてトレントとその相手がセックスすることによって妊娠と出産を迎えるというのも面白いアイデアでした。

1つのシチュエーションで2時間って様々な展開がないとテンポも落ちて、中だるみしてしまうと思うんですが、中盤ダレることもなくノンストップで緊張感のある展開が次々と起こって飽きさせない演出はさすがのシャマラン演出でした!

(2)計算されたカメラワーク

本作はとにかく人物の顔のアップを狙ったカットが、極端に多く使われています。カメラのアップは観客をグッと登場人物に感情移入させるための非常に有効な手段として使われますが、本作のようなスリラー作品にはもう一つの絶大な効果があります。それは「恐怖の共有」です。

登場人物の見ている視界や世界観をカメラワークで意図的に狭めることで、観客を登場人物と同じ目線に立たせることができます。
本来観客が気になるところに目線を行かせたくても、カメラに映っていないので何も見えない。カメラの背後や人物のもっと後ろ、さらには下から何が来るのか、全て観客が想像するしかないのです。

その視界の狭めた演出がとにかく怖いです。観ているこちらも登場人物と一緒になって恐ろしい出来事を追体験してしまうのです。

トレントとマドックスが冒頭で最初に急成長した時、カメラはなかなか二人の姿を見せてくれませんでした。ちょっと焦らし過ぎかもってくらい引っ張っていましたね。
トレント達と話していくうちに違和感を覚えるジャリン夫妻と、目の前にいる見覚えのない青年たちが我が子だと聞かされ何が起こっているのか理解できない表情の母親を映し、観客が何が起こったのか早く見せてくれ!という感情になった後に、最後の最後で急成長した子供たちをカメラが映します。

ここで初めて観客も誰だ!?と驚きを共有するのです。

その後も医者のチャールズが精神的におかしくなってしまい、ナイフを振り回し、周りに危害を加えていくシーンでもあまりにも狭い視点でどこからナイフが飛び出てくるのか分からない恐怖感がありました。これが引きの画で演出されていたら誰がどこにいてどのくらいの近さで襲ってくるのかが分かってしまうので恐怖感が出にくい結果となってしまいます。

こういった人物のアップを多用するカメラワークはエイリアン系のホラー映画とかにも多用されているイメージですね。

(3)新型コロナウイルスによる現代の閉塞感と似た世界観

「オールド」の公式サイトには物語が意図せずコロナによる世界の状況とシンクロしていると書いてありましたが、まさに「オールド」における設定や展開、登場人物たちの心情が今のコロナによる閉塞感をそのまま表しているかのようでした。

ビーチという閉鎖的な環境で何もすることなく年老いていく様子は、まさに今我々が直面していることです。自粛により行動範囲に制限がかけられ自由にどこにも行けない。人目もあり、なかなか旅行や帰省が憚られるこの状況は「オールド」で逃げ出したくても抜け出せない状況とよく似ています。

そして、
医者のチャールズの精神崩壊=医療崩壊
ビーチ内部の殺し合い、疑心暗鬼=コロナによる意見の不一致、争い

上記の展開は意図的にコロナを描いているような気がしてならないのです。現実の世界をそのまま表しているかのようでそっちの方がとてもスリラーでした。

勝手に成長を遂げてしまうトレントをはじめとした子供たちは、「プロムも卒業式もできない」と悔しさを吐露します。外出自粛によって子供たちの青春や楽しみも失われていく現実がスクリーンの中にもありました。

そしてこの映画の大オチとなるラストシーンでも明らかにコロナを彷彿とさせるシーンが登場します。製薬会社の身勝手な金儲けのために、市民は危ない治験試験にさらされているのです。

防護服を着た製薬会社の職員たちが医薬品開発を行う様子は、あまりにもここ数年で既視感のある映像です。まるで武漢の研究所のようでした。

ラストで、トレントとマドックスがビーチから脱出し、製薬会社の悪事を暴露する展開にはコロナの終焉を願うような救われた気持ちになりました。
コロナ禍でスタートしたと言われている本作の撮影ですが、この製薬会社のラストの演出に関しては、急遽変更を加え現代を表す象徴的なシーンにしたのではないかと思わずにはいられませんでした。

まとめ

久々に傑作のスリラー映画を観ました!108分ドキドキしたのはいつぶりだろうか、という感じです。

時間をテーマにした「オールド」。設定自体は割とありそうですが、そこに様々なアイデアを盛り込んで物語の展開を二転三転させて飽きさせないようにしているのは、さすがのシャマラン監督の手腕でした。

次回作のスリラー映画も早く観たいですね~

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