映画「WAVES/ウェイブス」ネタバレあらすじ感想 映像美に酔いしれ、家族の希望を描き出す

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公開前から音楽や画面の色彩がすごいと話題になっていた「WAVES/ウェイブス」でしたが、公開後、やはり話題になっていますね。
土曜の午後に鑑賞したら、満席状態でびっくりでした。

素晴らしい音楽と綺麗な映像を見て、日頃の仕事の疲れも癒されます。。

映像の美しさもさることながら、なんと言ってもこの映画、スクリーンの画面サイズが物語の展開によって、変わっていくところが最大の見所でもあります。

話題の「WAVES/ウェイブス」を早速鑑賞してきたので、感想を書いていきたいと思います!

あらすじ

高校生のタイラーは、両親と妹の4人で何不自由なく暮らしていた。しかし肩の怪我によるレスリングの挫折や恋人の妊娠など、思いもしないことが起こり続け、自分自身を見失ってしまう。怒りを制御できないタイラーはさらなる悲劇を招いてしまう。
やがてタイラーの悲劇から心を閉ざしてしまった妹のエミリーの前には、ルークという少年が現れ、次第にエミリー自身も前へと向かう。

以下、ネタバレ含みます

スクリーンの画面サイズ=登場人物の感情表現

最初にも書きましたが、「WAVES」では、スクリーンの画面サイズが物語が進んでいくにつれて、変化していきます。
これは面白い試みで、まさに映画館で見るからこその、唯一の映画体験になることでしょう。

ではなぜそのような演出方法を取ったのか?
それは、登場人物の感情を画面サイズで表現したかったからではないでしょうか。

冒頭はフロリダの美しい景色がワイドスクリーンで映し出され、その綺麗な景色と独特なカメラワークに圧倒されます。
主人公のタイラーは、家族に愛され、恋人とも順調で部活のレスリングも周囲から期待されていて、何不自由ない生活を送っているかのように見えます。
その時のタイラーの心情はそこまで不満もなく、人並みの幸せを感じていたはずです。

しかし、肩を怪我して医者から運動を止められていたが、タイラーは両親にも隠してそのままレスリングを続けてしまいます。
怪我を無視してトレーニングを続け、試合に出た結果、大きな怪我を負ってしまいます。

タイラーの生きがいの一つでもあったレスリングの選手生命を絶たれた時、スクリーンの画面は初めて狭くなります。焦りとやるせなさが画面越しに伝わってきます。
タイラーから見た世界の広さが少し狭まったのでしょう。

さらに、レスリングの挫折による傷心中に、追い討ちをかけるように、恋人のアレクシスが妊娠し中絶を巡って別れの危機になってしまいます。
アレクシスの「子供を産む」という決断に激怒し、口論になった末、タイラーは一方的に振られてしまうのです。最愛の人を傷つけ失ってしまうところで、スクリーンの画面はさらに狭くなっていきます。
この時はもはや画面の狭さに違和感を覚えるほどです。

その後事故とはいえ、タイラーは誤ってアレクシスを殺めてしまいます。恋人を自らの手で殺してしまう衝撃的な展開となり、スクリーンの画面はさらに狭くなっていきますが、今度は正方形に近い画面のサイズになります。
この時はタイラーのクローズアップを多用しており、タイラーの視野が狭くなり、ひどく混乱している状態を表しています。

画面のサイズを変えることによって、登場人物の感情を巧みに表現した見事な演出だったと思います。

後半はエミリーに焦点を当てて進んでいきますが、ここでももちろん、物語の展開と共に画面のサイズは変わっていきます。
観客はスクリーンの画面の広さと狭さを交互に見ることで、タイラーとエミリーの感情を一緒に見ているような感覚になっていきます。

二部構成による驚き

本作は明確な二部構成で成り立っていて、前半は兄のタイラー、後半は妹のエミリーを軸に物語が進んでいきます。

前半は、思春期の男子が誰もが必ず抱える父親との葛藤、恋人との破局、体の負傷によって、タイラーの転落を描いていました。

クラスの人気者で誰からも好かれるタイプだったタイラーにとって、不運が重なり全てがうまくいかなくなったことは堪え難い現実だったんですね。。

怒りで周りが見えなくなり、衝動的になってしまうタイラーは喧嘩の最中、恋人を突き飛ばしてしまいます。突き飛ばされたアレクシスは頭の打ち所が悪くまさかの展開で死んでしまいます。
タイラーがレスリングによって怪我をしてしまう辺りからの一連の不幸は、なかなか重いものがありますね。。
18歳という不安定な時期での葛藤と焦りみたいなものは画面を通して分かりやすく描かれていたと思います。

この辺りの不幸に次ぐ不幸は、人によっては苦手な人もいるかもですね。
決してハッピーな話だけでないですが、割と僕はこういった物語が好きなので抵抗は全くなかったです。

そして、タイラーが警察に捕まり残された家族は、、、という展開になって第二部の物語がスタートします。

後半は事件後のエミリーが軸に展開されていきます。
中盤で主人公が捕まってどうなるんだ!?と思っていたら家族に焦点を当てて進むのか、とここで理解します。

エミリーは前半ほとんど出て来ず、登場しても顔がはっきり認識できないようなカメラワークを意識的にされています。
なので後半でエミリー視点に切り替わった時、誰だっけ?と一瞬なりました(笑)

兄が犯罪者となり、周囲の目を恐れて心を閉ざしていたエミリーでしたが、ルークという少年と出会い閉ざした心を次第に開いていきます。
ここでも画面のスクリーンサイズは効果的に、エミリーの世界の広がりとともに拡大していきます。

タイラーの逮捕がきっかけでエミリーだけでなく、家族自体の関係性も揺らいでしまいます。
母親がショックで不安定になり、愛し合っていたウィリアム夫婦にも亀裂が入ってしまいます。

そんな時エミリーと父親のロナルドがタイラーの事件を乗り越えようと必死に自分たちの本音を話し合って、抱き合うシーンはうるっときてしまいました。

父と子、家族の物語

本作のテーマはこの「父と子の関係性」そして「家族の再生の物語」なんじゃないでしょうか。

厳しい教育の元育ってきたタイラーは、父親のロナルドの言うことを素直に聞く良き息子でした。
しかし、怪我やストレスを重ねるうちに父親に対して不満を露わにしていきます。

父親も厳しく育てることが親の義務だとタイラーに語っています。
タイラーや妻が何か反抗的な態度を取ってしまえば、「ここの主は誰だ?育ててやってるのは誰だ?」と高圧的な態度で黙らせていきます。

ロナルドは結果的に親子で本音を語り合う時間がなかったが故に、タイラーからも敬遠されてしまうのです。

タイラーが罪を犯した後、ロナルドは父親としての責務を果たせていなかったのではないかと自分自身を責めます。
しかしその過去の反省を活かして、エミリーに対しては父親としての主張を押し付けるだけでなく、きちんと「対話」することでお互いのことを理解しようとします。

ロナルドも、親として成長していき、一度崩壊しかけた家族をなんとか立て直していこうともがいていきます。

親子の物語はこのウィリアム家だけではなく、エミリーの恋人であるルークの父親との関係性も描かれていきます。
幼い頃に離ればなれになっていたルークと、その父親は病気をきっかけに再開を果たすことになります。
ルークの背中を押したのはエミリーでした。エミリーも過去の傷を乗り越え、前を向こうと必死にもがきます。

嫌いだったはずの弱った父親の姿を見て、ルークは思わず泣きながらハグをします。ウィリアム家だけでなく、ここでも父親が死んでしまう前に、家族の再生を果たす親子の姿がありました。

「WAVES」では不幸が連続して起こり、タイラーの転落とその家族の影響を描いていますが、物語の先に待っているのは絶望ではなく、「希望」です。


前を向くことでしか未来は変えることができないんだ。革新的な映像美と心地よい音楽に乗せて、そんなことをそっと教えてくれる作品でした。

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