映画「ディスクロージャー・デイ」ネタバレ考察感想 スピルバーグ待望のSF超大作!未知との遭遇から50年ぶりの贈り物

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近年人間ドラマを中心とした作品が多かったスピルバーグが待望のSF作品を作るということで、公開前からめちゃくちゃ楽しみにしていました!しかも地球外生命体をテーマに掲げるのは2005年の『宇宙戦争』以来11年ぶり!

最近では近未来のVR世界をテーマにした『レディ・プレイヤー1』がありましたが、レディプレも最高のSFエンタメ映画でしたね。やはりスピルバーグの代名詞はSFですからね。いつかどこかでまたやってくれると信じていました。

さて、そんな2026年の本命映画の1つ『ディスクロージャー・デイ』を観てきたので、考察感想を書いていきたいと思います。

過去にはスピルバーグ作品で2つ記事を書いたので、是非!

鑑賞オススメ点数・・・80点

・あらすじ

気象キャスターのマーガレット(エミリー・ブラント)とサイバーセキュリティのエキスパート、ダニエル(ジョシュ・オコナー)。接点のないはずの二人が衝撃的な機密情報を知ることとなった。やがて、その秘密を明らかにする使命を負った彼らの前に謎の組織が立ちはだかる――。(HPより抜粋)

以下、ネタバレ含みます。

(1)   スピルバーグの作家性が随所に発揮

スピルバーグはこれまで30作以上の監督作を生み出す中で、決まったモチーフや設定を施すことがしばしばあります。そんなモチーフや設定が本作でも随所に見られ、正にスピルバーグ映画を堪能できる1作になっていました。

まずよく使う主人公の設定として「郊外にいること」と「家庭環境が決壊していること」の2つがあります。
『ディスクロージャー・デイ』では、主人公のマーガレットはカンザスシティにあるローカル局の地方キャスターというポジションで登場します。決して全国で放送されるキー局で活躍する有名アナウンサーではないのです。そんな地方局でうだつの上がらないアナウンサーを主人公に、異星人との媒介者になり、地球を救うヒーローになっていく様子が最高でした。

後半明らかになっていきますが、マーガレットの父親は幼い頃にパーキンソン病で亡くなっており、その時のトラウマを抱えて生きてきたことが明かされます。
この2つの設定はスピルバーグがよくやるお得意の手法なわけで、本作でもこの設定は維持されていることが分かりました。

なぜこの設定をよく使うのかは、スピルバーグの生い立ちに由来しており、自伝的映画の『フェイブルマンズ』を観ればより深く紐解けるのではないかと思います。

他にも「手」と「眼」をよく使うことでスピルバーグは知られていますが、本作でも手の描写が本当に多かったことに気付く人も多かったはず。特に後半のクライマックスではマーガレットとダニエルが手を繋ぎながらマーガレットの過去に入り込んでいったり、ヒューゴと手を繋ぐシーンもあり、かなり手そのものや「手を繋ぐ」アクションを強調したシーンが多かったです。

ダニエルの彼女であるジェーンもデバイスを通してノアに頭の中に侵入される時は「手」が重要になっており、ノアを意識化から追い出す時には自らナイフで手を刺すことで、追い出すことに成功していました。

また、「眼」は本作のキービジュアルからも分かる通り、本作においても非常に重要なアイコンになっています。コウカンチョウと眼が合うことでマーガレットは不思議な力を得ることになり、マーガレットが人間に対してマインドコントロールをするときも、目と目が合わないと力が発揮できません。
さらには、マーガレットとダニエルが異星人と幼少期に邂逅する時、冠のような形をしたデバイスの集合体は一直線に「眼」に向かいます。

こうしたことからも、スピルバーグが本作において、これまで幾度となく過去作で使ってきたモチーフをふんだんに取り込んでおり、スピルバーグ作品として集大成のようになっています。

そして、スピルバーグは3つのテーマに沿って物語を進行することが多く、それは「コミュニケーション」「教育」「ヒーロー」です。
特に本作は「コミュニケーション」が非常に分かりやすいメッセージとして掲げてありました。
(2)ではその「コミュニケーション」について書いていきたいと思います。

(2)コミュニケーションは異星人でも通じるのか

スピルバーグがこれまで映画で何を訴えてきたのか?を端的に表せば、「コミュニケーションについてである」と言えると思います。そしてまた本作でも異星人とのコミュニケーションは成り立つのか?という主題をテーマに、様々な人間の行動をあらゆる思考から考えています。

マーガレットは彼氏のジャクソンと口論の最中、コウカンチョウが家の中に入り込んできたことに気付きます。そこからマーガレットの異変は表れ、突如ロシア語や中国語を無意識に話せるようになっていきます。この「多言語を無意識に扱う」のも面白いポイントでした。

カンザスシティのローカルテレビでは、明らかにロシアと北朝鮮を敵国と位置付けて、第三次世界大戦の幕開けを感じさせています。彼らと米国の中で何が一体折り合いがつかず、こじれているのか、その問いにスピルバーグは言葉が通じ合って会話ができれば、意外に解決できることもあるのでは?と伝えているように感じます。

そのうちマーガレットは異星人の言葉すらも扱えるようになり、異星人との「媒介者」になります。対話不能の相手と一体どのようにコミュニケーションを取れるのか、本作で描きたかったテーマはここにあると思います。

そして政府が隠し続きてきた異星人の研究の証拠が初めて開示されたとき、人類はどのように連帯し、異星人との交流を深めていくのか。敵ではなく同じ生命体としてまずやるべきことは攻撃ではなく、共感と理解であると訴えているように思います。

『シンドラーのリスト』以来、33年も一緒にスピルバーグと映画作りを共にしてきた撮影監督のヤヌス・カミンスキーは、陰影を表現するのが得意なカメラマンです。本作でも陰影はハッキリと描き、その特徴が遺憾なく発揮されていました。

マーガレットが幼少期に動物の形をした異星人に導かれる時、強烈な光に包まれます。これは正に1977年公開の『未知との遭遇』のラストで表現した異星人との接触を彷彿とさせます。
『未知との遭遇』ファンはマーガレットのこのシーンを観たとき大興奮だったのではないでしょうか!

公開後すぐに様々な賛否両論が巻き起こっている本作ですが、スピルバーグ作品をこれまでどれだけ愛してきているかも、評価に関わってきそうです。

私はスピルバーグ映画を愛した人間として、本作ももちろん肯定派です。
『未知との遭遇』からおよそ50年、スピルバーグからの答え合わせのように研ぎ澄まされた物語
に、鳥肌が立ちまくりでした。

(3)2026年、スピルバーグがSFで地球外生命体を描く意味

スピルバーグがSFで異星人を描くのは、実に11年ぶりになると冒頭で触れましたが、本作の切り口で映画化を決めた背景には2017年にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された、「光る物体と闇の資金:ペンタゴンによる秘密のUFOプログラム」という記事を読んだことがキッカケになっているそうです。

さらには、2023年にアメリカ連邦議会の下院監視委員会が「未確認異常現象:国家安全保障、公衆安全、及び政府の透明性に及ぼす影響」という公聴会で注目が集まったことから、スピルバーグは本作を作ることを明確に決断したといいます。

また、2026年2月時点では映画は完成していたかもしれませんが、トランプ大統領によって2026年2月、国防総省や関連省庁に対し、UFOや宇宙人・UAPに関する政府文書の特定と機密解除・公開を行うよう指示したことも超タイムリーな話です。

こうした動きからもアメリカメディアや政府の動きによって、しばらく封印していたSFや異星人に関する興味関心が、一気に湧いてきたのだろうと思います。

スピルバーグは以前、SF作品を作ることに対して以下ようなメッセージを残しています。

「SFは社会への警鐘を発するのに適した分野だ。SFが常に、やがて来るべき事柄について考えるための、第一段階の警報となってきたことを忘れてはいけない。SFというのは、説教がましくならず、よりわかりやすく観客の胸に警告を与えてくれる方法なんだ。」

『宇宙戦争』ではテロへの脅威を描き、『マイノリティ・リポート』では超管理社会での危険性、『レディ・プレイヤー1』ではVR世界による人と人の希薄な関係性に警鐘を鳴らしてきました。

そして本作ではいよいよ到来する異星人に関する情報開示、開示されたその先の人類の混乱について警鐘を鳴らしています。
これまでのSF作品では異星人がいたら?というある種仮説の物語でしたが、本作では異星人は「確実にいる」、「その情報が開示された時人類はどう行動するべきか」という異星人がいる前提によって物語が作られています。

これまでのスピルバーグのSF作品と一線を画しているのは、この明確な差なのではないかと思います。スピルバーグは過去作でもやってこなかった試みを本作で初めてやっています。それは宗教や信仰による直接的な関わりです。

ジェーンが元修道女という設定も重要です。「超越的な存在を知れば信仰は揺らぐ。パニックと無秩序に陥れば最後の砦は信仰なのよ」というジェーンのセリフに対して修道院長は、「それは地球だけの話。これほど広大な宇宙を造った神が、それを人間だけのためにするだろうか」と新たな解釈をもたらします。
聖書やキリスト教とも絡めた本作の物語は、信仰や神とはまた異なる存在、異星人とは一体人類にとって何者なのか。その答えを表現しているように思います。

マーガレットのラストのセリフは生放送中のテレビに向かって発する「Listen!」でした。
その先にどんな言葉が繋がるかは、想像に難くないはずです。スピルバーグが描きたかったテーマはこの「Listen!」の先に凝縮されているように感じます。

まとめ

やっとやっと、スピルバーグが本領を発揮する異星人との交流を描いたSF作品が観られました。
既に御年79歳。『ディスクロージャー・デイ』がスピルバーグの最後のSF作品になる可能性は十分あり得ます。近年は戦争や人間ドラマに焦点を当てた作品の方が多いですからね。

この時代に本気のSF映画を観れたことは、幸福でしかありません。

2026年は『オデュッセイア』や『マイケル』、『スパイダーマン』など、映画史からしてもとんでもなく豊作の年なのかもしれません。

それでもあと一作、スピルバーグのSF映画が観たい!!

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