映画「花束みたいな恋をした」 ネタバレあらすじ感想 深く、暖かい余韻が包み込む

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「東京ラブストーリー」、「最高の離婚」、「カルテット」などの脚本を手がけ超ヒット作を連発してきた坂本裕二脚本の本作品。公開前から坂元裕二ファンがざわついていた「花束みたいな恋をした」を鑑賞してきました!
ドラマの中で「最高の離婚」がめちゃくちゃ好きなので期待しながら観にいきました。

この手の有名脚本家が映画を作ると、監督の名前が埋もれてしまいますが、監督は土井裕泰。土井監督も「涙そうそう」や「ビリギャル」を作っていて実力派な監督です。

観賞後は、なんだか色々な感情が込み上げてきてしばらく余韻に浸れる優しい映画でした。
さっそく感想を書いていきます!

あらすじ

ある日、飲み会後に終電を逃したところから偶然、麦(菅田将暉)と絹(有村架純)は出会う。本や音楽、映画の話で、すぐに意気投合した二人はデートを重ね、付き合い始める。大学を卒業しフリーターをしながら同棲生活をスタートさせ、幸せで何気ない日々を過ごしていく。そんな幸せだった二人にも、徐々にお互いを想う気持ちが薄れていき、別れを意識し始める。

以下、ネタバレ含みます

(1)坂元ワールド全開の心に染みるラブストーリー

物語は菅田将暉演じる麦と、有村架純演じる絹が偶然カフェで出会う場面からスタートします。「音楽を聞くときは両耳を付けて聞くことが大事だ。なぜなら〜〜〜」とお互いのその時の恋人に片耳で音楽を聞くことの、勿体なさを力説する二人。二人が同時に席を立ち、片耳ずつで音楽を聞くカップルを注意しようと席を立つ。そこで麦と絹が顔を見合わせる。そんな坂元ワールド全開の物語のスタートでした。

冒頭のこのシーンは後々わかるのですが、麦と絹が別れた後に偶然カフェで再開した時のシーンです。そこから時は遡り二人の大学生の時の出会いから、恋の始まりを丁寧に描いてくれています。

映画が始まっていきなり、イヤホンのLとRからは別々の音楽が流れていることを延々と話すシーンは、「カルテット」の唐揚げ論争を見た時のことを思い出して懐かしくなりました。(笑)
坂元裕二は、どうでもいいけどちょっと気になっていたことを脚本に落とし込むのが本当に上手ですよね。

この映画はなんといっても「共感度100%のラブストーリー」と謳っているくらい、共感する部分がとてつもなく多い作品です。誰もが経験する、恋の始まりや大好きな恋人ができること、恋人と生活を始めること、そしてサヨナラすること。
二人の出会いから別れまでの5年間を通して、過去に恋愛で楽しかったこと、傷ついたことを麦と絹に重ね合いながらしみじみと観ることができます。

10代後半〜20代半ばに起こるリアルな学生時代の描写だったり、お互いが夢を諦め大人になっていく姿、そこから徐々に広がっていく相手への感情の薄れが痛いほど分かる気がしてなりません。
きっと、誰もが経験することを描いているおかげで、共感度100%のラブストーリーになっているのだと思います。普段あまり映画を観ない人でも、ドラマを観る感覚で感情移入できそうですね。

秀逸だったのは、靴によって二人の関係を表現しているポイントです。
最初の麦と絹の出会いは飲み会後に終電を逃した時。偶然出会うことになった二人はあっという間に意気投合し、居酒屋で時間を潰すことになります。
座敷タイプの居酒屋に靴を預けようとした時、二人の靴が全く同じだったことに気づきます。恥ずかしそうに顔を見合わせて微笑むあの瞬間に恋はスタートしていました。

靴が同じだった二人も歳を重ね、同棲を始めましたが、麦が絵を描く夢を半ば諦め、普通の社会人となり現実的な人生を歩む選択をした時、徐々に二人の関係は良くない方向に向かっていきます。
そんな時、また玄関に置かれた二人の靴が画面に映し出されます。その時の靴は別々の革靴が二足並んでいました。
二人の関係がすれ違っていることを暗示する印象的なシーンです。

さらに、ラストで二人が別れ話をする際、よく二人で使っていたファミレスに立ち寄ります。いつも座って何時間も何気ない話をしていた席にいたのは、初々しい若い男女でした。その若い男女を見つめて、麦と絹は5年前の楽しかった日々を思い出すのです。
若い男女二人の映像から靴にカメラが向いた時、二人とも同じ靴を履いていることに気付かされるのです。
靴が同じことに気づいた麦と絹は別れを悟り、涙を流すのです。

靴で二人の関係を表現するのはとても面白い演出で、涙無くしては観れない感動的なシーンでした。

(2)菅田将暉の自然な演技

なんだかんだで菅田将暉が出演している映画やドラマは、毎回引き込まれて観てしまいますよね。

本作でも自然な、まるでそこに存在するかのような山音麦という人間を映画の中で表現していました。
色々な監督や俳優がインタビューなんかで話しているのを良く目にしますが、演じる上で一番難しい役は「普通の人間」の役なんじゃないかと。
まさにこの「花束みたいな恋をした」に登場する麦と絹はどこにでもいる平凡な二人の男女の物語です。何か特別な才能があるわけでもなく、ごく普通の人間なのです。

その普通の人間をあそこまで自然に、かつ菅田将暉が演じていると分かるように個性も出しながら演じることがいかに難しく、並の俳優ならできないことを軽々とやってのけるのが菅田将暉という役者なんだなと、今回改めてそう思いました。

しかも、本作は麦の大学生〜就活生〜社会人になるまでの5年間を描いています。大学生の時は少し髪がボサボサで頼りない良くいる大学生を演じていました。
こういう大学生ほんと良くいるよね、みたいな。

就活が始まると髪を短くして社会の一部となっていきますが、まだ絵でメシを食うという希望を捨てていないようにも見えました。

しかし、実際に就職して、夢を諦める20代前半特有の心情の変化も絶妙に演じていたように思います。
最後の方は完全に夢を捨て堅実に生きるサラリーマンにしか見えませんでした。
絹のことが好きだった麦の姿は跡形もなくなり、恋の終わりにも、ものすごく説得力がありました。

大きく分けると、3つの世代をたった1ヶ月程度の撮影で演じ分けているって想像するだけでも、到底常人じゃできないですよね。

有村架純も八谷絹として確かに存在していました。麦のようにすぐに大人にはなりきれず、どこか過去に置き去りにされているような女の子を好演していました。
ただ、どの役を演じても有村架純だな〜とは思いましたが(笑)

(3)麦が最後に別れを拒み、結婚を求めた理由とは

(3)でこのテーマを選んだ理由は本作を観た女性が、なぜラストで別れを決断した麦が結婚を強く望んだのか意味が分からないと感想を漏らしていたので、男目線でその理由を書いていきたいと思います。

この意味はもしかしたら男性にしか理解できない悲しい感情なのかもしれません。。。。

物語中盤、同棲生活が上手くいかなくなった二人はぼんやりと「別れ」を意識していたのだと思います。でも、5年という歳月が決断の邪魔をする。
何かのきっかけさえあれば別れを選択し、新しい人生を歩めると感じていたのだと思います。

そのきっかけが先輩の死と、共通の友人の結婚式。
奇しくも、友人の結婚式で二人は同時に別れを決意します。ずっと感じていたけれど心の奥に閉まっていた別れた方が幸せだという感情を、結婚式を利用して別れる。結婚式という大きなイベントがなければ別れる決断を先延ばしにさせるほど、5年という時間は長いものなんですね。

麦が別れる瞬間に、別れを拒んだ理由。
それは男は常に側にいた存在が、明日いなくなってると実感すると怖くて怖くて仕方がないのです。
5年間も一緒に苦楽を共にしてきたパートナーが急に明日、目の前から去ってしまう。これほど怖いことはないと感じてしまうのです。女性は別れを意識した途端、あんなに好きだった彼がどうでも良くなると言いますが、反対に男性は別れが現実に迫ると、未練がましくまだ一緒にいたいと強く望んでしまう生き物なのです。
あれほど絹に対して冷めた感情を抱きながら、そうそう簡単に切り替えられるものじゃないんですね。
実際に生活している時はときめきも、セックスすらも求めなかった麦でしたが、いざ絹がいなくなるとわかった瞬間、一人になることが怖くて寂しくてどうしようもなくなるんですね。

そして、本当に好きだった人を失った時、しばらく立ち直れなくなるほどの喪失感が全身を襲うのです。
この辺りは男女の違いなのかもしれないですね。

まとめ

ラブストーリーとして非常に良くできた作品だったと思います。
観賞後、じんわりと心に残っていて決して悲しくはない温かい余韻に包まれました。

最後に偶然再開した麦と絹の復縁を希望する声も聞こえてきそうですが、あの終わり方で良かったと思います。
麦と絹の宝物みたいな5年間は、忘れられない想い出として深く二人の心に刻まれているのですから。

無性に恋をしたくなる、そんな風に思わせてくれる作品です。

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