映画「約束のネバーランド」 ネタバレあらすじ感想 生への渇望・貪欲に守る少女の戦いの物語

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週刊少年ジャンプで連載していた「約束のネバーランド」を実写映画化した本作。全世界累計発行部数は2500万部(2020年10月時点)で僕も原作を連載時から読んでいて好きな漫画の一つでした。
なので今回は原作ファンという目線で鑑賞して参りました!予告から雰囲気は良さそうだったので、原作実写化の不安もありつつ割と期待して観に行きました。


感想はひと言でいうと、「原作に超忠実な実写映画」という感じです。それでは、「約束のネバーランド」の感想を書いていきたいと思います。

あらすじ

エマ、ノーマン、レイたちは「グレイス=フィールドハウス」という孤児院で何不自由ない幸せな生活を送っていた。グレイス=フィールドハウスには「ママ」が母親代わりとなり子供たちの面倒を見ていた。
エマたちは里親に引き渡されて外の世界で暮らすことを待ち侘びていたが、ある事件をきっかけにハウスは幸せな孤児院ではなく、「鬼」に人間の脳を献上するための農園だったことが分かる。これまでの生活が全て偽りだったことに気づいたエマたちは命懸けのハウス脱獄計画を決行する。

以下、ネタバレ含みます

(1)キャスティングは「ほぼ」成功、特に北川景子がハマり役

原作には魅力溢れるキャラクターがたくさん登場しますが、基本的にはグレイス=フィールドハウス脱獄計画を企てるエマ、ノーマン、レイが中心となっています。そこにグレイスフィールドの支配人であるママとの心理戦が繰り広げられていく物語です。本作で実写化されているのは、原作最初の脱獄編。エマたちが脱獄を成功させるまでを描いています。
原作だと脱獄後は人間と鬼との生き残りを懸けた壮絶な戦いが始まるのですが、この辺りは今後実写化されるのかどうか、気になりますね。

今回の実写化で誰よりもハマったのがママを演じた北川景子でした。これまで正直演技に関していいなーと思ったことはあまりなかったのですが(ファンの人はごめんなさいm(__)m)、冷酷なママを見事に演じきっていました。特にエマたちが脱獄を成功させた時に初めて見せるママの苦悶の表情は原作にある絶望感と怒りを忠実に表現していたと思います。
悪役を演じて役者としての新境地を開拓したのではないでしょうか。
もし次回作も制作されることになったらまた新たな北川景子のママの姿を見てみたいと思わせられました。

ただ、本作の俳優の中で最も驚かされたのは、ノーマンを演じた板垣李光人です。初めてこの俳優のことを見ましたが、原作にいたノーマンがそのまま現実世界に現れたような感覚がありました。
浜辺美波や北川景子とも堂々とやり合っていて今後すぐに色々な作品で出てきそうな俳優ですね◎
浜辺美波は安定というか、原作の主人公のように明るく芯があって、リーダーシップ抜群なエマをしっかり演じていたと思います。ママを出し抜く時のシリアスな演技など安定していたので、安心して全編見ていることができました。
『君の膵臓をたべたい』ではミステリアスで魅力的な女子高生を演じていたので、一転して15歳の少女を演じて違和感が全然ないように見えるのは、演技の幅の広さを証明したように思いました。


キャスティングに関して少し残念だったのは、主役3人の子供たちが同じ15歳には到底見えなかったところです。現在エマ役の浜辺美波は20歳、ノーマン役の板垣李光人は18歳、レイ役の城桧吏は14歳です。しかもレイは撮影当時12,13歳だったそうで、さすがに6歳も違えば同じ歳に見せるのは無理があります。
誰が見ても感じる違和感を無理して城桧吏をキャスティングしたのは、おそらく制作サイドの話題作りの狙いがあったのでしょう。「万引き家族」に出演して話題になった後の制作発表で実際に聞いた時、僕も万引き家族のあの子供が出るのか!とワクワクしたのを覚えています。
話題作りも良かったのですが、もう少し年齢を揃えた方が観客側としては本作の世界観にすんなり潜り込めたような気がします。
キャスティング時に城桧吏をツモれた時のプロデューサー陣の嬉しそうな顔が目に浮かびます。。。(笑)

そして、もう一人、話題に触れておくべきなのはシスターを演じた渡辺直美です。原作に登場するシスターは黒人で成り上がるためには何でもする狂ったキャラクターとして描かれているのですが、このクセの強いキャラを自分のモノにしてシスターを演じていたと思います。
正直全く違和感がなかったし、北川景子同様かなりハマってました。意外性という意味では一番キャスティングがうまく行ったのではないかと思います。

(2)ロケ地・セットの再現度がGOOD

この映画ような趣があって、原作のイメージもある洋館のロケ地を探すのは相当苦労したと思いますが、原作のロケ地にそっくりで、違和感なくすっと物語の世界観に入り込めました。
冒頭でグレイスフィールドの外観が映り、中の構造も原作そっくりで驚きました。
外観は福島県にある国指定重要文化財「天鏡閣」というところで撮影が行われたようです。グレイスフィールドの中は火事のシーンもあるのでセットを作ったのではないかと思います。
鬼との交渉場所にあたる「門」も原作そっくりで良く作り上げたなと思います。
エンドクレジットでVFXチームも結構動いてそうだったのでこの辺りはVFXで処理してそうですね〜

一度僕自身もロケで洋館を探したことがあるのですが、なかなか探すのが大変なんですよね。撮影可能な洋館自体が限られている中で、原作通りのイメージを持つ洋館を探してきた制作部に拍手したいと思います!

こういった世界観ありきの作品ではロケ地やセットが特に重要になってくると思います。良いロケ地が見つかるかどうかで作品の良し悪しが決まるといっても過言ではありません。
そこに関しては間違いなく良かったのではないでしょうか。

(3)脱獄スリラー、原作に忠実すぎるが故の物足りなさ

映画「約束のネバーランド」のジャンルを映画的にひと言で括ると脱獄スリラーです。
脱獄スリラーものとしては本作はなかなかハラハラする展開を与えてくれました。後半のエマたちの脱獄とママの追いかける様は結末を知っていながらもドキドキしました。

音楽の使い方も良かった思います。ただ、原作を知っているので展開に難なく付いていけましたが、初見の人が観た時に展開の早さに良く分からない人もいる気がしました。
原作で時間をかけて脱獄する展開をたった2時間で詰め込んでいるので仕方ないと言えば仕方ないのですが、意外と時間をかけて丁寧に描けるドラマ向けの題材だったりして。
NETFLIXあたりが全8話でもう一度実写化してもらえないですかね(笑)

(3)の見出しでも書いていますが、結局のところ、本作は漫画原作の実写化なのです。原作が持つ怪しい雰囲気はしっかり作り込まれていましたが、本作で少し残念だったのは忠実に再現しているけれども、映画を観ているというよりは再現ドラマを観ているような感覚に陥りました。
原作にはエマたちの「生きることへの執着、誰も見捨てずに守り救う」というテーマがグレイスフィールド脱獄後にさらに色濃く出てきます。
この物語としては格好の映画におけるテーマを見落としていたように思います。

正確にはそのテーマも出そうという意思は感じられましたが、それがとても薄くて、不完全燃焼感があったのだと思います。
せっかくファーストカットが鳥籠の中の鳥を映していたので、籠から脱出する少年少女たちにフォーカスしていくのかと思いきや、原作のストーリー展開に固執することによって、本質的な問題である「エマはなぜそこまでして生き延びたいのか、どうして子供たち全員を守り抜きたいのか」そこの行動原理が映画としてはあまり描かれておらず少し残念でした。

原作映画ではあるけれど、もっと「映画らしさ」が欲しかったところです。
それが映画化する意味にも繋がってくるのだと思います。

ラストシーンで脱獄後に新世界を見つめ木に登るエマの姿は「猿の惑星」で新世界を見つめるシーザーの姿に重なりましたが、劇中の随所でそういった印象的なシーンをもっともっと観たかったなと思いました。

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