映画「ザ・クリエイター/創造者」ネタバレあらすじ感想 大国の侵略と支配から脱却するアジアの希望を描く

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ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』やスター・ウォーズシリーズのスピンオフ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のギャレス・エドワーズ監督が、完全オリジナルで待望のSF作品をまた作ることに!
『ローグ・ワン』で完全に監督を信頼することに決めたので、ギャレス監督がまた新作SFを作ると聞いて公開前からめっちゃ楽しみにしていました!

SF好きには堪らない世界観とAIやマシーンの造形、世界の荒廃感が最高でした。日本でも話題になっている本作の感想を書いていきたいと思います!

鑑賞オススメ点数・・・85点

あらすじ

遠くない近未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた——
人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊の〈ジョシュア〉は人類を滅ぼす兵器を創り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、兵器と呼ばれたAIの少女〈アルフィー〉だった。そして彼は“ある理由”から、少女を守りぬくと誓う。やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは…(HPから抜粋)

以下、ネタバレ含みます。

(1)ユニークな舞台設定にゾクゾク

映画の舞台設定は2070年の近未来。
人間はAIロボットとの共存が当たり前になり、一般家庭や仕事においてもAIロボットの稼働が当たり前になっている世界と言う設定。しかし、AIの暴走によってアメリカに核が落とされ100万人が死亡したという、衝撃的な始まりから映画はスタートします。

核を落とされたアメリカは怒り狂い、AIを重宝する<ニューアジア>を標的に破壊と殺戮を行っていきます。

AIのビジュアルも、よくあるロボットタイプだけでなく、AIに人間の顔を貼り付けた<シミュラント>と呼ばれるロボットもおり、これが物凄い不気味なのです。見た目は完全に人間なので、観ている側でも人間かAIが喋っているのか、時折分からなくなる瞬間がありました。

ビジュアル面も素晴らしい作品で、AIだけでなく、銃や飛行機、建造物、荒廃したアメリカとアジアの世界観がとってもゾクゾクしました。
『ブレードランナー』や『ターミネーター』、『AKIRA』、『サイバーパンク』などの荒廃した近未来のビジュアルを思い出した人も多いはず。そんなSF好きには堪らない映像作りが最高でした。

AIを起点に欧米諸国とアジアの二項対立になっていく様子も面白いです。SF映画と言えばこれまで、資本主義vs共産主義をメタファーとして描くことがほとんどでしたが、今回はアメリカに敵対する存在がアジアに変わっていました。

これは、現在の実世界でも既にアメリカの敵がロシアではなくなっていると、読み解くことも出来るかと思います。アメリカが今、最も危険視している存在は中国です。

現実世界を踏襲し、リアリティのある仮想敵国を置くのに、ニューアジアという設定がとても革新的に感じました。ただ、アジアの一国である日本に住む私たちからすると、「殺戮し、奪うべき相手」が共産主義国ではなく、アジアに変わっていることは、結構な恐怖でもあります。

ニューアジアの世界観でも、日本語や東南アジアの言語が飛び交い、漢字やカタカナが至る所で見られました。ニューアジアのリーダー的存在に渡辺謙を配役しているところからも、日本へのインスピレーションが見られましたよね。

エンドロールで主要スタッフにカタカナや漢字が割り振られているところを見ても、監督の日本好きが全面に出ていましたw
エンドロールの違和感はちょっと笑いましたねw

また、本作でも主役級に重要なポジションで登場する、アルフィー役のマデリン・ユナ・ヴォイルズもすっごい良かったですね!
映画が進むにつれて、愛着が湧いてくるし、ジョシュアが感情移入してしまうのも分かります。あんな綺麗なクリクリした瞳で見つめられたら、AIだとしても守りたくなります(笑)
めちゃくちゃ可愛かったので、今後の活躍にも期待したいです。

さらにもう一つ、本作の最高なポイントは音楽です!本作の音楽を担当しているのがハンス・ジマー。クリストファー・ノーラン監督とも度々タッグを組んでいることでも知られている名音楽家です。
『インターステラー』『ブレードランナー2049』『DUNE/デューン 砂の惑星』など、近年のSF大作映画はほとんどハンス・ジマーなのでないかという人気ぶり。
ハンス・ジマーの音楽によって、本作が奥深いものになっていることは間違いありません。壮大な音楽がSFの壮大さと非常にマッチし、映画としての芸術性を高めています。

(2)SF作品では類を見ない、徹底したリアルな戦争描写

物語自体は、近未来かつ、ぶっ飛んだ設定になっている本作ですが、戦争シーンの描き方はひたすらにリアルです。

今現在行われている、イスラエル-パレスチナ戦争でのニュース映像を彷彿とさせ、リアルな戦争描写にとことんこだわっているはずです。

地上戦や、空爆において、カメラの位置は常に地面に近い位置に置かれていました。ある時は胸の位置から、ある時は足元から、いきなり銃弾が飛んでくる様子を捉えます。

このようにあえてドキュメンタリータッチで描くことで、戦争を「人間」の目線で語るためなのだと思います。カメラが人間の目線にあることによって、観客は自分もその場にいて今にも殺されるのでは、という恐怖を体感できます。カメラワークからも、本作が意図するテーマが少しずつ見えてきます。

また、『ローグ・ワン』でも徹底したリアリズムで戦闘シーンを描いていたのがスター・ウォーズシリーズには珍しく印象的でした。『ローグ・ワン』でもベトナム戦争を想起させる舞台設定や背景が散りばめられています。
本作でも、ベトナム戦争を思わせる背景がいくつも出てきます。密林や沼、田園風景、そこで逃げ惑う人々・・・正にアメリカが無闇に侵略し、大金を使って大失敗したベトナム戦争の姿です。

東南アジアらしい寺院なども登場し、ベトナムやラオスなどでよくみられる僧侶の格好をしたAIロボットが膝立ちで、米軍が後ろから後頭部を銃で撃ち抜く姿は、正にテロリストです。

アメリカはAIを持つ国を一方的に悪だと決めつけ、支配しようとしますが、平和を望むアジアの民を見ると、どちらがテロリストか、どちらの正義が正しいのか分かりません。
正義のための戦いと大義を掲げながら、AI以外にも民間人を無差別に殺戮しまくるのは、一体どんな正当化した正義からくるものなのか、恐ろしいです。

(3)AIは悪なのか? AIを通して見えてくる現代社会への警鐘

後半で、主人公ジョシュアや妻であるマヤの行動原理も明かされていきます。
最初にジョシュアがマヤに近づいたのは、潜入捜査が目的でした。テロリストの疑惑があったマヤに近づき兵器の証拠をつかむこと。それがジョシュアに課された特殊任務でした。

次第にマヤと生活を共にすることで、子ができ、ジョシュアはマヤと自身の子に対し、本当の愛情を持ってしまいます。
しかし、マヤが願うAIの共存と、ジョシュアのAI殲滅という、愛する両者の目的が大きく異なるという悲しき運命にありました。この設定とストーリーに、すごく重厚な人間ドラマがありますよね。

AIの進化、暴走というテーマは『ターミネーター』を筆頭に数多くの作品がやってきました。ChatGPTが普及した今では、AIはさらにホットなテーマになっているとも言えます。

本作のユニークな展開の一つは、「AIが暴走してアメリカに核を落とした」という、アメリカによる隠蔽だったことが明かされるところです。
アメリカ自身の操作ミスで核が発射されたことを隠蔽し、AIに全て責任を押し付けます。ここでアメリカ政府の腐敗も匂わされています。

悪と印象操作されたAIも、実際のアジアの各国では愛されていて、家族のような存在として扱われます。

「AIを持つべき」としているニューアジアを欧米諸国の大国は否定し、蹂躙し、略奪する。

現代社会でも見られる、大国による支配構造がありありと見えてきました。ギャレス監督は本作を通して、近未来の予見と現代社会への警鐘を鳴らしています。

暴力によって、大国が小国を支配するという構造は何百年と変わらず、AIが発展した近未来でさえ変わらないのではないかと、危惧しています。
そして、現在の世界情勢を見ても、その構造は絶対に変わらないのだと思います。

『ザ・クリエイター/創造者』では、AIをメタファーにして、いつまでも互いの正義を譲らずに、争いを繰り返す醜い人間たちの様を描いています。

そして、本作が何より優れている点は、現代社会への警鐘を物語に内包し、SFエンタメに仕立てているところです。優れた映画作家は、本当に現実を映画に隠すのが上手いですよね。

ニューアジアで暮らすAIは、みな友好的で、人間を脅かす存在としては出てきません。AIを敵視していたジョシュアも、アルフィーとの交流を通じて、AIは人間の味方だと気づかされます。

AIの素晴らしさに気づいたジョシュアは、アルフィーと結託し、アメリカの軍事施設・ノマドを破壊する計画を実行します。ノマドの破壊はマヤの悲願でもありました。なぜならアルフィーが持つ「あらゆる機械をコントロールする」という能力を付加したのは、争いを止めることだったからです。

アメリカ側の視点から見てきた正義は、後半のアジアからの視点に切り替わったことで、単一的な正義などない、と思い知らされます。

ラストで、ジョシュアとアルフィーはノマドの軍事施設を完全に破壊することに成功します。アメリカが保有する最強の武器を破壊することで、ニューアジアの人々は歓喜します。

ニューアジアが大国の支配から脱却を示唆する、わずかな「救い」でした。
暴力による支配だけで終わらせず、しっかりと救いがラストに描かれているところに、感動しました。

ジョシュアは、マヤの記憶を宿すAIと最後に出会い、最愛の妻との最期を過ごすことができました。大国による支配からの脱却と同時に、ジョシュアが長年囚われていたトラウマからも解放される瞬間です。

ジュシュアとマヤのラストシーンも最高に美しいシーンでしたよね。
アシュリーの笑顔で終わるラストカットも非常に印象深く心に残りました。

まとめ

本作は映像美にもとことんこだわっている作品なので、是非大きなスクリーンで観ることを勧めたいです!

IMAX GTレーザーで観たのですが、迫力が本当に凄かった。戦争シーンでは、まるで自分も戦場にいるかのような臨場感で素晴らしかったです。

ギャレス・エドワーズの次回作も早く観たい!!

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